刺繍に欠かせないものの一つに、ステッチが挙げられます。
ステッチを刺すだけで、見た目の印象が変わります。そのため、さまざまな刺繍作品でステッチを目にします。そんなステッチに、実はいろいろな種類があることをご存知でしょうか。
ここでは、ステッチの基本的な情報やさまざまなステッチの種類などについて、ご紹介します。
ステッチの基本
刺繍でよく耳にするステッチですが、もしかしたら「ステッチって何だろう」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
刺繍をこれから趣味として始めようとしている方、刺繍について勉強してみようという方の場合、分からないことも多いかもしれません。また、専門用語が多すぎて理解できないという方もいるでしょう。
ステッチを、至極簡単に説明すると「縫い目」です。
ステッチとは、刺繍における縫い目のことを指しています。
「縫い目なんてどんなものにもある」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、縫い目の中でも、表から見える飾り用の縫い目のことを、主にステッチと呼んでいます。
すべての縫い目をステッチというよりは、あくまでも飾り用としての縫い目のことをステッチと呼んでいます。
見た目を、より印象深くできるだけでなく、縫い代を安定させるためにステッチを刺すこともあります。
布地の色とは、敢えて違う色の糸を使うことで、見た目の印象を大きく変えたりする効果もステッチにはあります。
さらに、本縫いだけでは、やや強度が弱いという場合などに、強度をアップするためにステッチが用いられることも珍しくありません。
このように、さまざまな目的でステッチを刺すことがあるのです。
ステッチのデザイン
刺繍を始めるにあたって、まずステッチをしっかりと理解することは、とても大切なことです。
ステッチができないとなると刺繍を究めることができず、ステッチを刺すことによって、何の変哲もない作品の見た目が良くなることもあります。
刺繍において、ステッチは基本的な作業ですが、それだけに奥が深いものでもあるのです。
そんなステッチの縫い方ですが、ステッチにもいろいろな種類があるため、その種類によって縫い方が変わります。
また、手でゆっくりと時間をかけて縫うこともあれば、ミシンで仕上げることもあります。
のんびりゆっくりと作品を仕上げたい、時間潰しと趣味を兼ねているという場合は手縫いで地道に進めていくのも良いでしょう。まずは、手縫いでのステッチにトライしてください。
ミシンを使って縫うときのコツですが、特に仕上げのステッチの場合、布の端を縫うことになります。
そのため、ミシンのおさえによって布が見えなくなってしまい、縫いにくくなるということが多々あります。針ばかりをずっと見ていても縫いにくいため、それよりも目印を見ていたほうが、より縫いやすいのではないでしょうか。
自分なりに目印を決めておき、そこに照準を合わせて縫っていきます。
刺繍の経験がない方、初心者の方、ミシンを使ったことがほとんどないという方の場合、いきなりミシンでステッチを刺すよりも手縫いのほうが良いかもしれません。
そのほうが、ステッチをより理解できます。また、作品を仕上げていく楽しさも味わえるのではないでしょうか。
慣れてきたら、ミシンで効率よく作業を進めるようにするのも良いでしょう。
ステッチのメリット
ステッチのメリットは、まず、見た目の印象が変わるということです。
ステッチがあるのとないのとでは、作品の雰囲気も大きく変わってしまうでしょう。
いかにも刺繍作品、といったビジュアルにすることも可能です。
いたずらにたくさんステッチを刺せばいいというものではありませんが、飾りとしてのステッチは見た目の印象を大きく変えることができる、というメリットがあります。
また、作品の強度をアップできるのも、ステッチのメリットと言えるでしょう。
本縫いとは別のところで縫い目を入れるため、自然と強度はアップします。
本縫いだけでは十分な強度を持たせることができなくても、ステッチを刺すことによって見た目を良くし、さらに強度までアップできるというのは大きなメリットではないでしょうか。
ステッチのデメリットは、ほとんどありません。
敢えてデメリットを挙げるとするならば、刺繍している作品によっては、印象が変わり過ぎてしまう可能性があるということぐらいでしょうか。
作品によっては、縫い目が一切見えないほうが、見た目の良さにつながるということもあるため、そのあたりを考えたうえで、ステッチを刺すことをおすすめします。
また、まったくの初心者の方の場合、作品を仕上げるまでに時間がかかり過ぎることも珍しくありません。
ステッチを刺すときの注意点として、これはステッチに限った話ではありませんが、手縫いの場合は、針で指を刺してしまうリスクが伴います。
ステッチは、布の端部分を縫っていくことがほとんどであり、やりにくいこともあります。そのため、手縫いしていると、誤って針を指に刺してしまうという可能性があります。
手縫いの際には、十分注意しながら進めてください。
ステッチの種類は、実にさまざまです。
現在では、相当な数のステッチが存在しています。
いきなりすべてをマスターしようとしても難しいため、まずは基本的なステッチを覚え、特徴についても理解しておくと、今後に役立つでしょう。
ランニングステッチ
数あるステッチの中でも、基本中の基本と呼ばれるランニングステッチは、スタンダードなステッチといっても過言ではないでしょう。
図案を点線でなぞるという、とてもシンプルで分かりやすいステッチです。そのため、さまざまな刺繍作品で用いられることがあるステッチです。
なみ縫いの要領で進めていくことができるため、初心者でも簡単にできます。
ステッチの中で、もっとも簡単な種類となります。
ランニングステッチを上手に仕上げるポイントは、線幅を揃えることです。
初心者の場合は、どうしても線幅がバラバラになってしまいますが、そうなると見た目が良くありません。線幅をできる限り揃えるように意識するだけでも、作品のクオリティは変わるでしょう。
しかし、線幅が揃っていないことによって、手作りらしい温もりの感じられる素敵な仕上がりになるかもしれません。
初めはなかなか難しいかもしれませんが、続けているうちに上手になるでしょう。
バックステッチ
バックステッチも、基本的なステッチの一種となります。
刺繍方法としては、本返し縫いと同じです。刺繍の基礎をマスターしている方であれば、それほど難しいものではないでしょう。
特徴としては、ランニングステッチが点線で図案をなぞっていくのに対し、こちらは直線で刺繍することになります。
直線的なステッチとなるため、文字をデザインしやすいという特徴があり、アイデア次第で作品にオリジナリティを加えることができるでしょう。
また、イニシャルや文字のデザインをする、デザインの輪郭をなぞる、といったことにも向いています。
先ほどのランニングステッチと並んで、基本的かつ使用頻度の高いステッチです。必ず、マスターしておきましょう。
ただし、刺繍の本返し縫いができないと難しいため、まずは、基礎的な刺繍テクニックである本返し縫いからマスターするようにしましょう。
刺繍を始めたいが、何からやればいいのか分からないという方もいらっしゃるでしょう。
そこで、ここでは初心者向けのステッチについてご紹介します。
文字や図案を線でトレース
先ほどご紹介したランニングステッチやバックステッチは、もっとも基本的なステッチとなるため、初心者向けと言っても過言ではありません。
もっとも基本的、かつ初心者向けのステッチではありますが、やり方次第でいろいろな表現ができます。
基礎的なテクニックだからこそ、しっかりマスターするようにしましょう。
ランニングステッチやバックステッチを駆使することで、文字のデザインや、図案をトレースしてデザインすることもできます。
シンプルな仕上がりにはなりますが、レトロな作風の刺繍作品に仕上げることも可能です。
技術的にそれほど難しくないわりには、本人のアイデア次第でいろいろなことができます。
初心者の方は、ランニングステッチやバックステッチを駆使して作品を仕上げてみましょう。
ある程度は裁縫ができる、少しでも刺繍の経験がある、趣味で刺繍を続けているという方の場合は、中級者と考えて差し支えないでしょう。
中級者ともなると、ランニングステッチやバックステッチだけでは物足りなくなるのではないでしょうか。
ここでは、中級者向けのクロスステッチをご紹介します。
クロスステッチで高度なデザイン
クロスステッチは、最近注目を集めつつあるステッチの一つです。
といっても、最近できた技法というわけではなく、以前から存在していました。
ランニングステッチやバックステッチでは、点線、直線で縫っていきますが、クロスステッチでは、ひと目ごとに糸をクロスさせていくことになります。
これが、最大の特徴と言えるでしょう。
クロスステッチを駆使することによって、デザインの幅を広げることができ、より高度で、デザイン性の高い作品も作れるようになります。例えば、小さなイラストを見事に再現する、大きなデザインを完成させる、などということもできるでしょう。
ランニングステッチやバックステッチだけではできなかったことも、クロスステッチであればできるようになります。
クロスステッチは、もともとはスウェーデンにおける伝統的なステッチです。
ノスタルジックなパターンもたくさん存在するため、アイデアに困ることもないでしょう。
まずは、既存のパターンを踏襲してみるのも良いかもしれません。
慣れてきたら、自分なりのデザインを、クロスステッチを駆使して完成させてみましょう。
刺繍をほぼマスターしている、基本的なステッチはほとんど使いこなすことができる、という方の場合は上級者と言えるでしょう。
上級者向けのステッチとしては、サテンステッチが挙げられます。サテンステッチは、作品を美しく仕上げることができる魔法のようなステッチです。
上級者の方は、ぜひチャレンジしてみてください。
サテンステッチ
図案を、糸によって塗りつぶすようなイメージで刺していくのが、サテンステッチです。
糸を一箇所に集中して刺すことによってサテンのような独特の光沢を生み出すことができるため、見た目にも鮮やかな、唯一無二の作品を創りだすことができるでしょう。
立体的なステッチになるのも大きな特徴で、ゴージャスな印象を持たせることができます。
数あるステッチの中でも、難易度は高めです。
しかし、基本的なステッチをあらかたマスターしたという方には、ぜひトライしてほしいステッチです。
難易度は高いものの、サテンステッチをマスターすることができれば、よりデザインの幅が広がり、いろいろなデザインを刺繍することができます。
まさに、上級者向けのステッチと言えるでしょう。
小さなデザインのステッチでも、サテンステッチであれば存在感を出すことができるため、ほかのステッチにはないビジュアルを実現できます。
マスターするのに少々時間がかかるかもしれませんが、チャレンジする価値は十分あるでしょう。
ただし、基本ができていないと難しいため、まずは、きちんと基礎的なステッチをマスターすることに力を入れましょう。
刺繍とは切っても切れない存在のステッチについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
ここでは、基本的なステッチから上級者向けのステッチまでご紹介しましたが、実際にはほかにもたくさんの種類のステッチが存在しています。
ここでご紹介したステッチをすべてマスターしたあとは、ぜひほかのステッチにもチャレンジしてみましょう。
あらゆるステッチを使いこなせるようになると、作品の自由度はさらにアップします。